新しいブック
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26●ちまた草取り掲載日:平成24年5月25日 雨後には雑草が勢いよく成長してくる。私はじっとしていられなくなった。足腰が悪いので、腰掛け持参で草取りに挑戦している。  4月末ごろからの悪天候で庭一面に小さな草が出そろっている。一本一本遊び事でもしているように抜いていく。根が残っていると、また芽を出してくる野性的強さがある。  私が幼いころに祖父の草取りを手伝っていたとき、「草千本だからのう…」と、3年たてば1本が千本にもなると教えられた。  庭は春真っ盛り。松は大きな長い新芽をグンと伸ばし、ツツジはもう咲き終えて新緑の葉が美しい。サツキは今が満開。花好きの亡夫の植えた花々を眺めていると涙腺もゆるむ。  いろいろと思い出を手繰りながら草取りをしていると腰が痛くなった。一服と思い腰を伸ばせば、雨後の児島連山が近くに見えて、新緑が美しいこと。また、わが田の麦の穂が風に波打つ。この地に生活できる幸せを深く感じる。  東京暮らしの息子家族のことが頭に浮かぶ。彼も定年になれば故郷の良さが分かるだろう。私はその時まで元気で草取りをしようと決心した。

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