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45●岡山市民の文芸姑の介護 私が地元の会社に勤めていた昭和五十一年八月末のことである。早く起床して朝食の用意をしていると姑が「ちょっときて、うちは足が立たんようになった。起こしておくれ。」と、呼ぶのでびっくりして行ってみると、ぐったりしていて言葉もはっきり聞きとれないので、まだ眠っている夫を起こして茶屋町から医師を迎えてきてもらった。 「脳梗塞らしいですが高齢者ですから家で介護をしてあげて下さい。」と言われた。 私は会社で売上事務を担当していたので即退職すことはできないので、姑と夫の晝食の用意をして夫に留守を頼んで会社へ行った。 そして事の次第を社長に告げて、三日間でやり残しの仕事等を片付けて退職させて頂いた。私はこの会社が好きであり農作業をやりくりしてでも休まないようにしていた。また五月初めに結婚して東京で新生活をしている息子の応援もしてやりたくて退職することは残念であったが、仕方のないことであった。 それからの姑の容態は一応落ち付いてきたものの認知症が始まり話しかけても何の応答もないのでラジオの音を小さくして近くに置いておけば殆ど眠っていた。 食事は両手が麻痺しているので私が抱きかかえて箸やスプーンで口へ運んでいると「あんたはどなたさ掲載日:平成20年

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