新しいブック
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49あの夜の涙の意が解せたのである。 七月二十日、私がポリ袋の内職をしていると「白桃と鰆のサシミを買うてきてくれ…。」と、言うのでバイクを飛ばして茶屋町のスーパーに行った。帰ってみると、もう三年余も酸素吸入をしている夫が倒れ、一口食べたアイスクリームがコロンと。私は腰が抜け電話機まで這っていった。救急車で病院へ。 「お気の毒ですが五時十分死亡を確認します。」との医師の冷たい言葉に、私は夫に抱きついて泣き崩れてしまったのである。 天国の夫に   星がまばたくあの国へ  貴方は逝ってもう帰らない  清く綺麗なその国で  貴方は何をしているの  貴方の瞳の優しさ浮ぶ  夜空見上げて過ぎし日偲ぶ掲載日:平成10年 あれから二年も経たけれど 何の音沙汰してくれず 私少しは焼きもち気分 月の世界で恋人つくり 火星に度でもしているの でも私まだ訪ねてゆかないわ

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