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65●岡山県 高齢者主張大会応募作品この家からの旅立ち希望 日本女性の平均寿命年齢に近くなるとそろそろ旅立ちの覚悟もしなければと思うこの頃です。 明治中期建立の古い農家に、昭和二十二年十月嫁いで来た私。岡山市内は空襲で焼野ヶ原であり、農家は米等も割当供出の時代で一生懸命働かねば生活の出来ない時代でした。 昭和二十四年に娘を、二十八年に息子を授かり、この子供たちが学校に行くようになると「うちの家はボロイなあ…」とか「勉強部屋が欲しいなぁ…」と言うようになり、私達も一生懸命働いて、家の新築をしようと話し合っていました。 すると神に通じたのか、私が昭和三十六年夏、茶屋町の歯科医院に行き順番待ちしていると、一人の老婦人が「近所の○○さん方に子供を大学に行かせる為に田園を少し売りたいのだが、近所の人は誰も買うてくれる人がいない…」との声が私の耳に入ったのです。 話の続きを聞いていると二反歩の田が五十万円との事。当時サラリーマンの月給が二万円前後の時代だったので納得も出来たのである。 しかし我が家は夫が一人息子で兵役に行き、当時手作業時代で近所の方に小作としてお願いしていたら、戦後の農地改革で没収されて八反歩の農家となっていたので、これから子供たちの教育費も必掲載日:平成23年

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